自然科学、ウイルス

6/26
ワールドカップで早めに帰っていたおかげで、久しぶりに「プロジェクトX」の再放送を見ることができました。
この時間帯は再放送の時間枠で、本放送の方は当然に時間的に無理です。
今日の放送内容は、「天然痘を撲滅した男達」。
日本人の「蟻谷」さんがプロジェクトリーダーになって天然痘と闘うという、いつもの展開です。
この番組を見て初めて知ったのですが、
・8世紀の平城京を壊滅させたのも天然痘(この治癒を願って聖武天皇は奈良の大仏を作ったそうです)、
・11世紀のヨーロッパの人口を1/3にしたのも天然痘(13,4世紀のペストしか覚えていなかった)
・16世紀にアステカ帝国を壊滅させたのも天然痘(コルテスはどうした、と思いますがあの番組ですから)
だそうです。
一つびっくりしたのは、インドには「天然痘に感染すると幸せをくれる女神」というものが存在するそうです。
古代に於いてほぼ確実な死を意味した天然痘を、その意味をある意味転換。
イエスの教えに近いといえば、価値の転換という次元では類似していると思います。
こういうものを、「退行的期待形成」というのでしょうか。
いずれにせよ、その程度まで深刻な疾病であったということなのでしょう。
以前に流行性の疾病に関する本を数冊読んだことがあります。
「ウイルスの逆襲」とか、そういった名前の書物であったかと記憶しております。
その中で私が記憶していることといえば、人類が現在まで生きながらえているのは、純粋に偶然に過ぎないということです。
文献資料が残っているだけでも、人類史上には多数の致命的な疾病が流行してきました。
病名は今となっては確定できませんが、資料からは恐るべき態様が伺われます。
凄まじく強い感染力に、9割以上の致死率を誇るという破滅的な疾病も存在しました。
「存在しました」というのが重要なところで、この疾病は現在はすでに死に絶えております。
あまりに強い感染力と致死性の故に、自己の宿主(すなわち人間です)ごと自らを滅ぼし尽くしてしまったからです。
こうしてあまりに強すぎる病は、局所的な大流行とともに、自らを滅ぼしてしまうのが常でした。
少なくとも彼らは宿主(人間)を、自己の繁殖に必要な機関は活かしておく必要があるのです。
ここから分かる点は、病原体の戦略としては宿主を早急に滅ぼしてしまうのは得策ではないということです。
言葉を変えるならば、病原体にとっては宿主を活かしておくことが事故の生存にとっても有益ということになるでしょう。
つまり、人間との共存関係に至るということです。
この点、人間のDNAの中には外部のウイルス起源としか考えられない部位が多数存在するといいます。
人類の繁栄すなわち病原体の繁栄となるわけで、この共生の段階に至っては人間と病原体はすでに一体化していると評価できるでしょう。
HIVがそれなりに繁栄しているのは、10年以上と比較的長期の潜伏期間を持つ点があるといえます。
私個人の見解としては、現状のエイズの問題はまだ人間とHIVの共生関係が確立されていない事に起因するのであって、近いうちにHIVは人間の一部になってしまうだろうと思います。
その際には人間の寿命の低下などあり得るかもしれません。
本題に戻りますが、病原体にとっての最良の選択肢は人間との共生関係に至ることです。
ところが病原体には先見性を持つだけの知能は存在しません。
彼らは「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。」戦略を採用しています。
かりに適度な感染力と、適度な致死性(病原体の繁殖、すなわち他者への感染)をもつ疾病が発生すれば、その病原体は人類と共に自らを滅ぼし尽くす可能性は十分にあり得ます。
これは病原体にとっても割に合わない結末ですが、彼らにそれを予見することはできないのです。
過去に於いては、あまりに危険な病原体は即座に絶滅してしまうのが常でした。
ところが今日の交通網が発達している場合を考えてみてください。
アフリカのエボラ出血熱が北アメリカの一般病棟でさえ発見される時代です。
100%に近い致死率と高い感染力を持った病原体が、世界各国に飛散することは必然ではないでしょうか。
ワクチンの作製なんて間に合いません。
隕石の場合と同じで、人類が今日存在しているのはたまたま今まで破滅的な事態が発生していない、という純然たる偶然によるものなのです。


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