自然科学、脳の可塑性

9/29
帰宅後テレビをつけますと、たけしの「まるみえ」で人体特集らしきものをやってました。
脳の特集部分がなかなか興味深かったので、感想を少々。
「右脳が無いのに生きている少年」というものが登場。
頭の右半分が完全になくなっている画像がテレビに映ったのはちょっとびっくり。
最も驚かされたのは、彼が事故で右脳を失った年齢が、14歳とかなりの高齢であること。
私が脳機能に関して最も印象的であったのは、養老武氏の言葉。
「極端な可塑性は、不定形と同じである。」(唯脳論から)
氏の理屈が極めて単純明快なので、ここに少々。
「脳は各部位ごとに、それが司る部位が確定されている。
それは、生物の進化の歴史に由来する。
たとえば、目ができたときには目を司る機能部位がが神経中枢に追加。
この様に、生物が新たな器官を獲得するにつれ、中枢神経にもそれを司る部位が増えていいった。
従来の部位が、新器官を統御することは無い。
一対一対応がもっとも単純であり、生命は最も単純な原則に従うからである。」
以上が彼の言説なんですが、これに従えば右脳が欠落すれば、それに対応した身体機能も失われれるはず。
右が無くなれば左がそれをカバーできる、というほど人間の脳は可塑的でない。
そこまでの可塑性を認めるならば、もはや脳の機能分析など学問ではない、ということが彼の主張。
つまり、脳の可塑性はあくまで例外事項、ということらしいです。
以前のNHK特集「驚異の小宇宙人体、脳と心」で、2,3歳の幼児期に大脳の多くを失いつつ生存している症例が報道されていました。
この年齢ならば、脳はまだまだ発育途上なのでこの可塑性も、不可能ではないとの事。
ただ、今回の「まるみえ」の症例は14歳。
脳発育の最終段階といってましたが、あくまで例外的事例なんでしょうねえ。
この場合、「例外」は「奇跡」と呼んで、希望とするのが正しい評価なのかも。
もう一つ面白かったのは、知的障害者でありつつ芸術方面での驚異的才能を発揮する場合の理由。
(サヴァント症候群というらしく、全世界に100例ほどあるらしい)
この様な事例が生じるのは、幼児期に脳に障害を負った場合に限定されるそうです。
この障害で死滅した神経細胞の跡地を埋めるべく、近接する他の領域を司る神経野が膨張するそうで。
この膨張した大脳野の司る領域の機能が、その面積増大に伴って驚異的に伸張するそうでした。


戻ります
inserted by FC2 system