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今回、別の文書の転載です。
先に読んでた書物としての新約聖書のまとめの一部です。
非常に興味深く、これは万人が認識を共有するべきではないかと感じた箇所。
いわゆる「さまよえるユダヤ人」、「流浪の民」、「国持たぬ民」という俗説が如何に真相を反映しない認識であるか。
その歴史的誤謬を指摘したくだりです。
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70年のユダヤ戦争(対ローマ独立戦争でユダヤが敗北している)によってディアスポラが発生したわけではない。
ディアスポラはヘレニズム時代の初めから存在している。
ディアスポラが増えようと、パレスティナからユダヤ人がいなくなったわけではない。
パレスティナのユダヤ人はパレスティナに住み続け、ディアスポラのユダヤ人人口が増えたのである。
実際ディアスポラのユダヤ人人口は本土からの直接移民では考えられないほど巨大だったのである。
ディアスポラの巨大なユダヤ人人口は、ヘレニズム諸都市におけるユダヤ教への改宗者によって説明されるものである。
祖先はユダヤ人ではないが、ユダヤ教に改宗し、ユダヤ人ディアスポラでユダヤ人として生活するようになったのだ。
紀元前後の数世紀には、ユダヤ教の熱心かつ成功を収めたプロパガンダ活動により、ユダヤ教への多くの改宗者が発生していたのである。
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なお、改宗者によるディアスポラの人口増加をイスラエルの国家主義者は強度に嫌がる。
それは20世紀になってからの「自分たちの祖国に帰る」というイデオロギーが嘘であることが判明するからだ。
そもそも戦争に負けたからといって敗戦民族がその国土に住めなくなるということはありえない。
(世界各地の日本企業の出先機関を、太平洋戦争に敗れた大和民族のディアスポラと考える人などいない。)
支配者がせっかくの支配地域から住民に逃げられては侵略の意味そのものが失われるからである。
住民(農民)の搾取こそが支配の目的だからだ。
「国を失った流浪のユダヤ人」という発想は、古代帝国の侵略支配について全く常識を欠いているといってよい。
そして今日のイスラエルのユダヤ人の殆どは、ディアスポラのユダヤ人の子孫である。
パレスティナに住むユダヤ人はそのまま今に到るまですみ続けた。
ただ、アラブの侵略によってイスラム化し、アラブパレスティナ人として今日呼ばれているだけである。
南アフリカのオランダ人やイギリス人の子孫の白人が、強大な軍事力を持ってイギリスやオランダに帰り、現地人を殺し追い出し、祖先の土地を返せと主張すること。
この仮定は誰が見ても著しく不条理であろう。
実はイスラエルという国家は、この仮定と全く同程度に虚構なのである。
蛇足ですが、俗説ではユダヤ人はローマ帝国との敗戦の結果「国土居住禁止令」によって祖国を失い、流浪の民となったということにされてます。
その結果各地にディアスポラができたと。
(食物の宗教的禁忌などを実践するには、一定規模以上の人口による密集生活がどうしても必要となる)
(そのユダヤ人の集合体を「ディアスポラ」といいます)
当然私も犬福程度の知能しかないのでこれを信じてました。
冷静に考えると、上記命令は著しく合理性を欠いてますね。
帝国内から追放するか皆殺しにするならともかく、厄介な連中を自国内の大都市に(結果として)追いやるなど狂気の沙汰です。
もちろん、一民族(民族という定義自体が政治的ですが)の皆殺しなど、あのナチスの科学力を持ってすらできなかったことが古代ローマにできるはずがない。
一国内から追放するなどというのも、物理的に不可能ですね。
そもそも追放すべき対象の確定ができるなどというのは、現代行政国家の戸籍制度を古代に投影した幻想に過ぎないし。
驚かされるのは、ユダヤ教が布教活動を行なっていたということでしょうか。
今現代のユダヤ教よりはよほど普遍的性格を有していたようですね。
あのころの宗教状況は、実によく分からんものがありますね。
「ミトラ教」がキリスト教と対等の巨大勢力だったとか、都市部では「デュオニソス祭儀」が隆盛を誇ったとか。
また、ユダヤ人は旧約聖書ゆえに自民族の同一性を保ちえた、という命題も幻想であったようですね。
正確には、アイデンティティーにしがみついた一部が独自の正典を掲げていたということに過ぎないようで。
一応、こう書いたからといって私がユダヤ人を憎んでるとかそういうわけではないです。
ナチの歴史もあれば、現代の殺戮不法占拠国家でもある。
その事実を正確に認識することが重要であると考えるだけ。