「ドラゴンランス戦記」再版に際して


耳傾けよ

賢者の言葉が降り注ぐ

記憶も言葉も届かぬ古の

・・・・・ 「ヒューマの頌歌」冒頭よりの抜粋


私の心のファンタジーの原点である小説が再版されることになりました。
(正確には再版ではなく、他の出版社から発売です。)
その名は、「ドラゴンランス戦記」
詳しい情報は、
こちらのリンク先をご覧ください。
なお、本作品の公式ウェブサイトも3月18日から立ち上げられるそうです。

ここではこの小説の簡単な紹介を致したいと思います。
ゲーム好きにとってはまさに必読の書と申してよいと思います。

本作はテーブルトークゲーム、「AD&D」(Advanced Dungeons & Doragons)を基礎設定にした小説です。
特色はまさに、ゲームをその起源に持つ事でしょう。
この点が「ホビットの冒険」、「指輪物語」、「果てしない物語」など一般的にファンタジー小説と呼ばれるものとの最大の相違点です。
私は上述の物語は全て目を通しております。
これらの作品群を否定するつもりはありませんし、それはもっぱら自分の読み込みのたりなさが原因であると思います。
ただ、これらの作品群は一回読み通しただけではつまらないのです。
物語の展開は平板で、心躍らせる展開もさほど多くはありません。
それらの価値は、深く読み込んだものにのみ開示されるといってよいのではないでしょうか。
対してこの「ドラゴンランス」。
起源にゲームがあるのですから、一読しただけで大変に楽しめる作品です。
我々にとってなじみの、モンスター達や亜人種、呪文に神々に満ちあふれた世界が舞台であるからです。

と、申しましてもウィズなどをやり込んだ人間程度には限定されるでしょうか。
今となってはRPGといえばボタン連打と怠惰の象徴のような名詞となり果ててしまいました。
しかしながら、そこにはRPGが心をわくわくさせてくれた時代。
それが見事な形で存在しています。

鬱蒼と生い茂る森の深奥部
荒涼とした古城の楼閣
戦士達の剣が円弧を描き
魔術師の火球が闇夜を切り裂く
そして舞い上がる深紅のドラゴン
人智を超越した力が存在する世界

具体的内容は、ドラゴンランス戦争という一大戦局の中で活躍を果たした一軍の冒険者達の足跡を描いたものです。
膨大な背景設定を持ちつつも、叙述されるのはそのほんの一部分。
自分は詳しくないですが、ガンダムにおける一年戦争や、スターウォーズなどに共通の図式ではないでしょうか。
微力にして卑小な冒険者達の集団が、ねたみ恨みや内部対立に苦しみながらもその役割を果たして行きます。

物語の中で見事であるのは、次の点に尽きると自分は思います。  

  • ドラゴンの偉大さ  
  • 魔法の偉大さ
    これらは見事に描かれています。
    絶大なるこれらの力の前に、塵ほどの重みしか持たない人間。
    しかしながら、打ちひしがれ、絶望にさいなまれながらも運命にあらがう人間の姿。
    この対比が大変に見事でした。


    もちろん、稚拙な点も多数あります。
    善と悪の均衡の教義など。
    何ら具体的内容を持たない抽象的原理たる善悪を振りかざして、それらは均衡するべきだの。
    法哲学的考証に耐える議論ではありませんね。
    続編の「ドラゴンランス伝説」(自分は大好きですが)のストーリーはかなり納得がいきませんし。
    やはり、ファンタジーは「白日夢」がその意味です。
    (「めぞん一刻」や「BOYS BE」だって立派なファンタジーですから。)
    大規模な世界観の構築となってくると必然的に破綻を来してしまいます。
    恋愛描写も、読んでいると恥ずかしくなってきますね。

    これらの幾多の欠点を考慮に入れても、やはり大変に面白い小説です。
    心がわくわくする、このような体験を味わえる物語が一体どれほど存在するでしょうか。
    豪華版ということで少々(というよりもかなり)お高くなっているようですが、その価格に見合う価値は存在すると断言致します。
    とりあえず、最初は全6巻。
    もっとも長い巻でも半日もあれば読み終わるでしょう。
    私は通して5回以上は読んでいると思うので、是非ともお勧めします。
    そして、ファンタジーの世界に心を遊ばせるのです。


    我こそは過去と現在の主なり。

    我が来訪は予言に示されし通りなり。

    我がために門は道を開くべし。

    ・・・・私のもっとも好きなくだりの引用でした。



    以上です。

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